
Yくんは、お友達と遊ぶのが大好きな元気な男の子です。
PARCでは、サッカーやクライミングネットなど身体を動かす遊びに夢中で遊んでいる姿が良く見られます。
同じ時間に年下のお友達がいると、「一緒に遊ぶ?」「これ僕やり方わかるよ!教えてあげようか?」と声をかけてあげる事もあり、頼れるお兄さんのような一面を見せてくれることもあります。
一方で、「こうしたい!」という気持ちが強く、自分の思いを通そうとしてしまうことも…。
そのため、時にはお友達とのやり取りの中で気持ちがぶつかってしまう場面もあります。
それでも、Yくんの中にあるのはいつも「一緒に遊びたい」「仲良くしたい」という気持ちです。
その気持ちが、関わりの中で少しずつ行動にも表れるようになってきました。
はじめは難しかった「帰る時間」
PARCに通い始めた頃、Yくんが苦手だった事に、「帰る時間」もありました。
「まだ遊びたい!」「帰りたくない」という気持ちが大きくてスタッフが声をかけても気持ちの切り替えが難しく、Yくん自身もモヤモヤを抱えたまま帰ることもよくありました。
スタッフも「どうしたらYくんに伝わるかな?」「Yくんにとって安心できる関わりってどうしたらいいんだろう?」と考えながら伝え方・関わり方を模索していました。
“見えること”が安心に繋がった
Yくんの保護者の方とやり取りを重ねる中で、「先が分からないと不安になりやすい」「言葉だけだとイメージしづらい」というYくんの姿が見えてきました。
そこで、Yくんが安心して動くことができるように、時間ややる事を“見える形”で工夫を始めました。

PARCに来た時・帰る時のルール、YくんがPARCで練習する事、知ってほしい事を書いて、ルールを一緒に確認しました。
初めのうちは、時間通りに動くのは難しい様子もありましたが、「今、何分かな?」「次は何をするんだった?」とスタッフに一緒に確認しながら取り組むうちに、少しずつ自分で考えて行動できるようになってきました。
最近では、「これが終わったら片づけるね」と自分から声をかけてくれたり、「45分になったら教えてね」と伝えているとしっかり伝えてくれたりと、見通しをもって過ごす力が育ってきています。
そして今、Yくんの中で大きな変化!“モヤモヤ”を言葉にできるようになってきました。
以前は、気持ちを伝えることが難しく、モヤモヤしたまま帰ることも少なくありませんでした。
保護者の方からも、家に帰ってから「あの時、○○が嫌だった」と話すことがあるとお伺いしていました。
Yくんが安心して気持ちを伝えられるように、日頃から思ったことを受け止める姿勢を大切にし、「そう思ったんだね」「どうしたかった?」と声をかけながら関わってきました。
また、気持ちが落ち着かない時には無理に聞かず、「落ち着いたら教えてね」と時間を置いて話すことができるようにしています。
そのような関わりを続ける中で、最近は、モヤモヤした気持ちをその場で、「本当はこうしたかった」と自分の言葉で伝えられることが増えてきました。
自分の気持ちを言葉にして伝えることは、大人でも難しいことです。
それをYくんが自分の力で少しずつできるようになってきたことは、大きな成長だと感じています。
そして、この変化は他の場所でも見られています。
保護者の方からは「学校でモヤモヤした時に、Yくんが自分でちゃんと伝えられているようです。」と嬉しいお話もいただいています。
お友達と関わる中で気付いていくこと
Yくんは遊びの中でリーダーシップをとることが多く、サッカーでは、チーム分けをしたり、点数を記録したり、自分が中心になって遊び進めることを楽しんでいます。
でも時には、「こうしたい!」という思いが強くなり、お友達の意見に耳を傾けることが難しいこともあります。
そんな時には、スタッフが「○○くんにはこうしたかったのかもしれないね」と、お友達の気持ちを代わりに伝えることで、Yくん自身も少しずつ相手の気持ちに気付く様子も見られるようになってきました。
また、「勝ちたい」気持ちが強く、自分のチームの点数を多めにカウントしてしまった時には、「今のゴールに入ってたかな?」と聞くと「間違えてた、直す」と素直に認めて訂正する姿もあります。
Yくんは今、お友達と関わる中で、“自分の気持ちを大切にしながら、相手の気持ちにも目を向ける”という、人との関わりに欠かせない力を、今練習しているところです。
「できた!」が自身に変わっていく
片付けの時間になると「僕これ片づけるから先生こっちお願い!」と自分から役割分担をしてくれることがあります。
保護者の方とルールを一緒に振り返ることもあると伺い、「45分になったら片付けて、50分に帰る」という流れが、Yくんの中でしっかりと定着してきている様子が見受けられます。
保護者の方からも、「学校でも“片付けの時間だよ”と言われると、お友達と役割分担をするために声をかけたり、動いたりできるようになってきました」と嬉しい報告をいただいています。
最後に
通い始めた頃は、どうしたらいいのか分からず戸惑っていたYくん。
でも今は、自分の気持ちと向き合いながら、どう行動すればいいのかを少しずつ考え、実践できるようになってきました。
お友達との関わりや気持ちのやり取りは、まだまだ練習途中です。
うまくいかない日もありますが、Yくんが試行錯誤をしながら、しっかりと前に進んでいます。
これからもYくんが安心してチャレンジできるように、そして、「できた!」をたくさん感じられるように、私たちスタッフも、寄り添いながら一緒に歩んでいきたいと思います。