あなたは「保育所等訪問支援」という制度・サービスをご存知でしょうか。
実際に利用されている方もいれば、初めて見聞きするという方もいらっしゃると思います。
今回は、PARCでも行っている「保育所等訪問支援」についてご紹介します。
保育所等訪問支援とは?
保育所等訪問支援とは、平成24年4月1日に改正児童福祉法により創設・施行された支援です。
支援が必要なお子さまが通っている保育園や幼稚園、学校等に専門知識を持つスタッフが訪問し、集団生活に適応するため、お子さまへの直接支援や、園・学校の先生や施設に間接支援を提供するサービスです。
保育所等訪問支援が創設されるまで、発達支援は施設や事業所という特別な場所において、通所や入所という形で提供されていました。
しかし、従来の通所支援では以下のような課題が出てきました。
通所支援サービスの課題
発達課題が見過ごされやすい
発達上の課題が保育園・幼稚園、学校などの集団場面で気づかれることが多いため、家庭や個別対応では問題が見えにくく、通所支援に至らないケースも多くありました。
集団での活動に不適応が出てきた
通所支援で身に付けたことを集団の場面で活かせず、不適応を起こすことも少なくありません。
保育園・幼稚園、学校などでの集団適応のため、通所支援以外の支援が必要となってきました。
通所支援を卒業した後の支援資源が不十分
通所支援を終えて保育園・幼稚園、学校などへ移行した後のフォローが不十分であることがあります。
特にフォロー体制が制度上確保されていないことが問題です。
立場によるニーズの違いによる軋轢
障害特性の個別性からくる支援の困難さが保育園・幼稚園、学校などの職員を疲弊させる一方で、保護者が保育園などに対してもどかしさを感じ、結果として保育園などと保護者の間に軋轢が生じてしまうことも少なくありません。
保育所等訪問支援の意義
障害や特性によって、支援内容は子ども一人ひとり異なります。
その子に合ったオーダーメイドの専門的支援を普段生活する集団場面で直接的・間接的に行うことが発達・成長に有効です。
また、障害児通所施設等の適切なアセスメントに基づく実効性のある支援方法を、並行通園先や移行先施設に直接的・間接的に引き継いでいくことも大切です。
保育所等訪問支援の最大の目的
保育所等訪問支援を通して、保護者と訪問先(園・学校など)の距離が縮まり、子どもの成長・発達を共に喜び合えるようになることが保育所等訪問支援の最大の目的です。
そして最終的には、子どもが安心・安全に過ごせる環境を作り、保育や教育の効果を最大限に引き出せる支援を行っていくことが目標です。
結果だけでなくプロセスにも目を向ける
発達が気になる子どもの多くは、以下に挙げる傾向があります。
- 思いを表現することが苦手
- 言葉と行動が異なることで誤解を受けやすい
- 自己を肯定する気持ち(自己肯定感・自己受容感)に波が生じやすい
勉強やスポーツなど、「結果」に重きを置く傾向はごく一般的かと思います。
しかし、結果のみに注目してしまうと、失敗や目標を達成できなかった子どもたちは自分自身に落胆したり、自尊心を傷つけられてしまったりという事態に陥ることもあります。
「結果のみ」ではなく、「プロセス(過程)」にも目を向けることで、子どもたちの想いをくみ取ったり、頑張りの数々が見えてきたりするかもしれません。
PARCの保育所等訪問支援で大切にしていること
PARCの療育では、次の3つのことを大切にしています。
①子どもたちが能動的に行い
②楽しいと思える活動の中で
③成功体験を得る
同じ行動でも、主体性の有無など動機が異なると、その効果や習得に大きな違いが生まることは想像に難くないと思います。
例えば、
- 他者(大人)からの指示を受けて、機械的に行動する。
- 子どもが主体性を持ち、自ら意識して行動する。
上記のように、主体性が伴うか伴わないかだけでも、行動面だけでなく感情面や発達面などさまざまな面の成長に違いが出てきます。
PARCでは、子どものさまざまな発達・成長に繋げるため、自主性・能動性に重きを置き、「結果」と「プロセス(過程)」の両方にアプローチしています。
この「プロセス(過程)」と「結果」の両方にアプローチすることは、PARCだけでなく、ご家族に行っていただくことが最も大切です。
だからこそ、PARCでは「家族参加型療育」をすすめています。
子どもが自主的・主体的に動くために大切なこと
子どもが自主的・主体的に行動するには、大人による次の要素が大切になります。
・声掛けの言葉
・タイミング
・頻度
・間
このように、大人にとっては最適な「声掛け」や「タイミング」「頻度」「間」だったとしても、子どもにとってはそうでないこともあります。
私たちPARCスタッフは、「子どもたち一人ひとりにとっての最適」を考えて日々の療育を行っています。
子どもの主体性を尊重する大人の姿勢が肝心
上述したように、子どもが自主的・主体的に行動するための大切な要素に気を付けることはもちろんですが、なによりもまず、子どもに関わる大人の「子どもの主体性を尊重する姿勢」が必要不可欠です。
大人からの指示ではなく、子どもが「自分で気がつく」声掛けをすることで、
自主的に
「行動」
↓
「認知」
↓
「感情」
に移していけることを目指します。
子どもに対して、
- 想いを汲み取り
- 結果よりも過程(プロセス)に重きを置き、
- 上手くいかなかった「結果」に落胆するよりも、
- 上手くいくように頑張った過程(プロセス)に注目する
そんな姿勢で、自己を肯定する気持ちの向上に繋げていきましょう!
今回は保育所等訪問支援の成り立ちと、PARCの療育についてご紹介しました。
次回は保育所等訪問支援の流れを、事例とともにご紹介します。