■理学療法士(Physical Therapist=PT)ってなあに?
理学療法士とは、ケガや病気などで身体に障がいのある人や、障がいの発生が予測される人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、および障がいの悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気等の物理的手段を治療目的に利用するもの)などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職のことです。
■理学療法士はどんなことをするの?
理学療法士を一言でいうならば、「動作の専門家」です。
寝返る、起き上がる、立ち上がる、歩くなどの日常生活を行う上で、基本となる動作の改善を目指します。そのためにはまず、赤ちゃんから高齢者まで医学的・社会的視点から身体能力や生活環境等を十分に評価し、それぞれの目標に向けて適切なプログラムを作成します。
そして、実際に関節の動きや筋力強化など運動機能に直接働きかける治療法から、日常生活動作練習や歩行練習などの能力向上を目指す治療法まで、動作改善・獲得に必要な技術を用いて目標達成(自立)を目指します。
■発達が気になる子どもの運動状況(DCDとの関連性)
近年、発達に特性のある子どもに対して理学療法処方がなされることが多くなっています。主にコミュニケーションや社会性の壁が課題とされる一方で、運動機能に対する問題(運動のぎこちなさや不器用さ)が指摘されることもニーズとして増加しつつあります。
感覚機能への問題やボディーイメージ・運動イメージによる課題、姿勢やバランスの不安定さなど総称して「発達性協調運動障害Developmental Coordination Disorder=DCD」と呼ばれています。
学校を訪問支援すると、先生からもよく質問として上がるのが運動面や姿勢に対する相談です。
■こどもへの理学療法(運動療育)
子どもへの運動療育は、バランスボールやトランポリン、ボルダリングなど全身運動を目的とした種目がたくさんあります。それを組み合わせて行うサーキット・トレーニングはPARCでもよく実施しています。
また、キャッチボールや繩跳びなど、協調運動を取り入れる種目もあり、運動療育の幅広さを伺うことができます。ただし、運動療育が効果的に出現するには、
本人が
・能動的に
・楽しく
・上手くいった!
と思える瞬間だと考えています。
この3つが揃わなければ、運動療育の効果は薄いかもしれません。それほどまでに、本人の行動の肯定化は意味のあることなのです。
■おわりに
運動機能へのアプローチは、言語指示が困難な場合であっても、課題設定が可能な分野です。
運動療育の中でコミュニケーションが培われ、言葉を介さなくても社会性や相互性を育むことができます。
また、充足感があれば欲求や達成感が言葉として出てくる子も多くいます。そんな運動は、すべてコミュニケーションの手段であり、姿勢と運動の安定性は社会性の基礎を構築していきます。
子ども一人ひとりと向き合い、運動療育の楽しさを伝えていきます。
文・理学療法士 亀澤康明