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髙畑脩平先生の「みんなで考える「読み書き」準備と支援」

読み書きできない 学習障害 LD 書字表出障害 ディスグラフィア 読字障害 ディスレクシア 読みの困難 書きの困難
先日、高畑脩平先生(藍野大学医療保健学部作業療法学科 助教 / 作業療法士 / 修士)にハートケアグループ メディケア・リハビリ研修会(WEB)「みんなで考える『読み書き』準備と支援」の講師を務めていただきました。
読みづらさを感じている子、書きづらさを感じている子は、どうして困難さを感じているのでしょうか?
そして、その困難さを取り除くために、私たちはどのような準備と支援ができるのでしょうか。
今回は、特に「読み」に重点を置いてお話を聞きました。

▽目次
1.読み書きに困難さを感じている子どもたち
2.読みの問題とその支援
3.文字を読む工程
4.視覚処理が苦手
5.音韻処理が苦手
6.小脳障害モデル(流暢性)

 

読み書きに困難さを感じている子どもたち

読みづらさを感じている子、書きづらさを感じている子に対して、あなたはまず、どのような支援を考えますか?
  • 読めないから、繰り返し読む練習をする
  • 書けないから、繰り返し書く練習をする
などでしょうか?
もちろん、繰り返し練習をすることでできるようになる子もいます。
しかし、繰り返し練習がなかなかうまくいかない子は、この練習によって「僕・わたしはいくらやってもダメなんだ…」と学習性無力感に陥ってしまう可能性があります。
こうなってしまうと勉強だけでなく、自分自身に価値がないのではないかと考えてしまうこともあります。
 

読みの問題とその支援

読み書きの基本は「読み」の方にあります。
まずは「読み」のトラブルについて考えてみましょう。
 

読字トラブル

  • 文字に興味を示さない
  • 逐次読みになる(「た、ん、ぽ、ぽ」と一文字ずつ区切って読むこと)
  • 読み飛ばし、勝手読み
  • 特殊音節(「っ」「ちゃ」「きゅ」などの小文字)を読み間違える
  • 似た文字を読み間違える(「い」と「り」など)
  • 読解ができない
 

文字を読む工程

そもそもなぜ私たちは文字を読めるのでしょうか?
 

読字の芽生え段階

文字を読み、理解するようになる初めの段階です。
年長さんや小学校低学年のお子さまは、下記のような流れで文字を読んでいます。
  1. 視覚・・・文字を図形として見て分析する
  2. 音韻・・・文字を音に変換する
  3. 意味・・・意味と繋げる
  4. 理解・・・①~③を踏まえて理解する
上記の流れに慣れてくると、「②音韻」を飛ばして「③意味」に行き「④理解」にまで一気に行くことができます。
これを「読字の熟達段階」といいます。
 

文字が読めない理由

▼眼球運動が苦手

眼球を動かすことが苦手で、文字を一文字ずつしか見られなかったり、一つのところに視線を止めておくことが苦手だったりすることが原因で、読みづらさを感じている可能性があります。
 

▼視力が悪い・視野が狭い

視力が悪かったり、視野が狭かったりすることで文字がよく見えていない可能性があります。
メガネ屋さんでレンズの調整をしてもらうだけで改善が見られる子も中にはいます。
 

▼文字を音に変換できない

音韻処理をする際にトラブルがある可能性があります。
また、文字を流暢に読むためには「小脳」が大事な役割を担っており、この小脳にトラブルがあるという説もあります。
※まだ研究中のため、あくまでも「仮説」であることをご理解ください。
 

▼耳で聞くことが苦手

文字を図形として分析はできるが、音を聞き取る力が弱く、音をうまく捉えられないことによって読みづらさを感じている可能性があります。
 

▼集中力が続かない

集中力が続かず、視線が色々な所にいってしまったり、モチベーションが保つことができなかったりすることにより、読みづらさを感じている可能性があります。

上記はあくまでも一例です。文字が読めない理由は一人ひとり違うので、医師、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士などに音読検査を依頼するのも一つの方法です。
 

視覚処理が苦手

目から入ってきた情報を処理する機能に「大細胞システム」と「小細胞システム」というものがあります。
  • 大細胞システム・・・空間・距離感を掴む
  • 小細胞システム・・・図形を捉える、色を捉える
大細胞システムにトラブルがあるお子さまは、遠い場所にある黒板の文字を見たあと、自分の手元にあるノートに書き写す際、視線の遠近を調整することが苦手な場合が多いです。
視線の遠近を合わせることに疲れてしまい、板書が上手くできないことで読みづらさを感じてしまいます。
 

光過敏/アーレンシンドローム

アーレンシンドロームは、特定の波長の光に過敏性があるため、見えている世界が歪んで知覚されます。

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多くの人は特に問題なく、この文章を読めるかと思います。
しかし、アーレンシンドロームのお子さまにとっては、

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白い背景に黒色の文字はコントラストが強く、眩しすぎて見えずらくなっていたり、

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文字が所々隠れてしまったり、二重になってしまったり、

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色がついて滲んだり、あちこちへ動き回ったりして見える症状があります。
こんな状態で文字を読むのは、とっても難しいですよね。

実際にアーレンシンドロームのお子さまの中には、小学校5年生まで「文字は動くもの」と認識しており、「みんなも動く文字を頑張って読んでいるんだから、自分も頑張らなくちゃ」と人一倍努力していたお子さまもいます。
 

▼色調反転や光量調整で見やすく

アーレンシンドロームのお子さまの多くは、コントラストが強い白地に黒文字が読みづらいと感じています。
タブレットやスマートフォンには、色調を反転する機能(黒背景に白文字)や光量を調整する機能が付いている場合が多いです。これらの機能を使うことで、お子さまが見やすい画面に調整することができます。
 

▼100均の色がついたクリアファイルでコントラストを軽減

100円均一などで売られている色のついたクリアファイル越しに文字を読むのも良い方法です。
背景が白でなくなるので、コントラストが軽減され、読みやすくなります。
どの色が読みやすいかはお子さまによって違うので、一緒に買いに行くのも良いですね。
 

フォント(書体)によって読みづらさがある

フォント(書体)には大きく分けて「明朝体」と「ゴシック体」があります。
学校の教科書は主に「明朝体」で書かれており、これが原因で文字が読めないお子さまもいます。
 

▼どうして明朝体は読みにくい?

  • 文字の線の太さが一定でない
  • 線の末端にある払いの三角形部分に注意が向いてそこから目が離せなくなる
最近では学校でも「ユニバーサル(UD)フォント」という、誰もが読みやすいフォントを使用するようになってきています。早くすべての学校で環境が整えばいいですね。
 

音韻処理が苦手

音韻処理とは、文字を一音一音区切って処理することです。
「読字の芽生え段階」でいう「②音韻」のところですね。
音を捉えることが苦手ではない場合、「かめら」を「KA」「ME」「RA」と一音ずつ頭の中で分解することで「③意味」への準備を行います。
しかし、音で捉えることが苦手なお子さまは、言葉を一音ずつ分解することができず、オウム返しやしりとり、逆さ言葉など、音に注目することが苦手です。
 

目に見えない音を視覚化する「りずむことば」

音で捉えることが苦手なお子さまには、「りずむことば遊び」など、目には見えない音を手の形(視覚情報)で分かりやすく見せることで、単語に含まれる構成を意識しやすくなります。
 

文章スラッシュ

文章を言葉ごとに切って、間にスラッシュ(/)を引くことで読みやすくします。
特に小学校3年生頃から教科書の字間が詰まり、それまで読めていたものが読みづらくなってしまうことがあります。そんなお子さまに特に有効です。
 

小脳障害モデル(流暢性)

脳の神経のプロセスにトラブルがあり、読みづらさを感じることを「小脳障害モデル」と言います。
小脳にトラブルを持っているお子さまは、姿勢の保持やキャッチボールが苦手で、日常生活活動においても複雑な課題に困難さを感じている場合が多いです。
 

姿勢の改善

小脳機能の改善を目的として、「読み」とは一見全く関係なさそうな姿勢のコントロールや運動機能を改善したことにより、読字の能力が向上した例もあります。
 

まとめ

読みづらさを感じる理由はお子さま一人ひとり違います。
だからこそ多職種が連携し、成長に合わせて様々な角度からアプローチしていくことが大切です。

書字については「みんなでつなぐ読み書き支援プログラム」(NPO法人はびりす)へ!
※Youtubeへ飛びます。

 

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